肩の痛み
肩の痛み
首すじ、首のつけ根から、肩または背中にかけて張った、凝った、痛いなどの感じがし、頭痛や吐き気を伴うことがあります。
肩こりに関係する筋肉はいろいろありますが、首の後ろから肩、背中にかけて張っている僧帽筋という幅広い筋肉がその中心になります。
首や背中が緊張するような姿勢での作業、姿勢の良くない人(猫背・前かがみ)、運動不足、精神的なストレス、なで肩、連続して長時間同じ姿勢をとること、ショルダーバッグ、冷房などが原因になります。
問診や神経学的診察、特に触診で僧帽筋の圧痛と筋緊張、肩関節可動域や頚椎疾患のチェックなどで診断します。X線(レントゲン)撮影のほか、必要によりMRI、筋電図、血圧測定などの検査も行います。
頚椎疾患、頭蓋内疾患、高血圧症、眼疾患、耳鼻咽喉疾患、肩関節疾患の随伴症状としての「肩こり」も少なくありません。
肩こりは予防が大切です。
肩の体操療法
マッサージ療法(筋肉の血流を改善させ、筋緊張をやわらげる)、温熱療法(蒸しタオル、入浴などで筋緊張をやわらげる)、運動療法(筋力強化)、安静、薬物療法(シップ薬、筋弛緩薬、局所注射など)を行います。
明らかな原因疾患があれば、その治療が必要です。
まず、整形外科医に御相談ください。
肩関節が痛み、関節の動きが悪くなります(運動制限)。
動かす時に痛みがありますが、あまり動かさないでいると肩の動きが悪くなってしまいます。
髪を整えたり、服を着替えることが不自由になることがあります。
夜中にズキズキ痛み、ときに眠れないほどになることもあります。
中年以降、特に50歳代に多くみられ、その病態は多彩です。
関節を構成する骨、軟骨、靱帯や腱などが老化して肩関節の周囲に組織に炎症が起きることが主な原因と考えられています。肩関節の動きをよくする袋(肩峰下滑液包)や関節を包む袋(関節包)が癒着するとさらに動きが悪くなります(拘縮または凍結肩)。
圧痛の部位や動きの状態などをみて診断します。肩関節におこる痛みには、いわいる五十肩である肩関節の関節包や滑液包(肩峰下滑液包を含む)の炎症のほかに、上腕二頭筋長頭腱炎、石灰沈着性腱板炎、肩腱板断裂などがあります。
これらは、X線(レントゲン)撮影、関節造影検査、MRI、超音波検査などで区別します。
自然に治ることもありますが、放置すると日常生活が不自由になるばかりでなく、関節が癒着して動かなくなることもあります。
痛みが強い急性期には、三角巾・アームスリングなどで安静を計り、消炎鎮痛剤の内服、注射などが有効です。急性期を過ぎたら、温熱療法(ホットパック、入浴など)や運動療法(拘縮予防や筋肉の強化)などのリハビリを行います。
これらの方法で改善しない場合は、手術(関節鏡など)を勧めることもあります。
40歳以上の男性(男62%、女38%)、右肩に好発します。発症年齢のピークは60代です。
肩の運動障害・運動痛・夜間痛を訴えますが、夜間痛で睡眠がとれないことが受診する一番の理由です。運動痛はありますが、多くの患者様は肩の挙上は可能です。
五十肩と違うところは、拘縮、すなわち関節の動きが固くなることが少ないことです。他には、挙上するときに力が入らない、挙上するときに肩の前上面でジョリジョリという軋轢音がするという訴えもあります。
腱板断裂の背景には、腱板が骨と骨(肩峰と上腕骨頭)にはさまれているという解剖学的関係と、腱板の老化がありますので、中年以降の病気といえます。
明らかな外傷によるものは半数で、残りははっきりとした原因がなく、日常生活動作の中で、断裂が起きます。男性の右肩に多いことから、肩の使いすぎが原因となってことが推測されます。
断裂型には、完全断裂と不全断裂があります。
若い年齢では、投球肩で不全断裂が起こることがあります。
診察では、肩が挙上できるかどうか、拘縮があるかどうか、肩を挙上して肩峰の下で軋轢音があるかどうか、棘下筋萎縮があるかどうか調べます。軋轢音や棘下筋萎縮があれば、腱板断裂を疑います。
X線(レントゲン)所見では、肩峰と骨頭の間が狭くなります。MRIでは骨頭の上方の腱板部に断裂の所見がみられます。
急性外傷で始まった時には、三角巾で1~2週安静にします。
断裂部が治癒することはありませんが、70%は保存療法で軽快します。
保存療法では、注射療法と運動療法が行われます。
注射療法では、肩関節周囲炎を併発して夜間痛があると、水溶性副腎皮質ホルモンと局所麻酔剤を肩峰下滑液包内に注射しますが、夜間痛がなくなればヒアルロン酸の注射に変えます。腱板のすべてが断裂することは少ないので、残っている腱板の機能を賦活させる腱板機能訓練は有効です。
保存療法で肩関節痛と運動障害が治らないときは、手術を行います。
手術には、関節鏡視下手術と通常手術(直視下手術)があります。
関節鏡視下手術の方が低侵襲で、手術後の痛みが少ないので、普及してきていますが、大きな断裂では、縫合が難しいので、直視下手術を選択するほうが無難です。
どちらの手術も、手術後は、約4週間の固定と2~3か月の機能訓練が必要です。
夜間に突然生じる激烈な肩関節の疼痛で始まることが多いです。痛みで睡眠が妨げられ、関節を動かすことができなくなります。
発症後1~4週、強い症状を呈する急性型、中等度の症状が1~6か月続く亜急性型、運動時痛などが6か月以上続く慢性型があります。
40~50歳代の女性に多くみられます。肩腱板内に沈着したリン酸カルシウム結晶によって急性の炎症が生じることによって起こる肩の疼痛・運動制限です。
この石灰は、当初は濃厚なミルク状で、時がたつにつれ、練り歯磨き状、石膏(せっこう)状へと硬く変化していきます。石灰が、どんどんたまって膨らんでくると痛みが増してきます。そして、腱板から滑液包内に破れ出る時に激痛となります。
圧痛の部位や動きの状態などをみて診断します。
肩関節の関節包や滑液包(肩峰下滑液包を含む)の炎症であるいわゆる五十肩(肩関節周囲炎)の症状とよく似ており、X線(レントゲン)撮影によって腱板部分に石灰沈着の所見を確認することによって診断します。石灰沈着の位置や大きさを調べるためにCT検査や超音波検査なども行われます。
腱板断裂の合併の診断にMRIも用いられます。
急性例では、激痛を早く取るために、腱板に針を刺して沈着した石灰を破り、ミルク状の石灰を吸引する方法がよく行われています。三角巾・アームスリングなどで安静を計り、消炎鎮痛剤の内服、水溶性副腎皮質ホルモンと局所麻酔剤の滑液包内注射などが有効です。
ほとんどの場合、保存療法で軽快しますが、亜急性型、慢性型では、石灰沈着が石膏状に固くなり、時々強い痛みが再発することもあります。硬く膨らんだ石灰が肩の運動時に周囲と接触し、炎症が消失せず痛みが続くことがあります。痛みが強く、肩の運動に支障がありますと、手術で摘出することもあります。
疼痛がとれたら、温熱療法(ホットパック、入浴など)や運動療法(拘縮予防や筋肉の強化)などのリハビリを行います。