高齢者の運動機能低下(ロコモとフレイル)
高齢者の運動機能低下(ロコモとフレイル)
運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態を「ロコモティブシンドローム」=ロコモといいます。
ロコモティブシンドロームとは、英語で移動することを表す「ロコモーション(locomotion)」、移動するための能力があることを表す「ロコモティブ(locomotive)」からつくった言葉で、移動するための能力が不足したり、衰えたりした状態を指します。ロコモとはその略称です。
人間が立つ、歩く、作業するといった、広い意味での運動のために必要な身体の仕組み全体を運動器といいます。運動器は骨・関節・筋肉・神経などで成り立っていますが、これらの組織の障害によって立ったり歩いたりするための身体能力(移動機能)が低下した状態が、ロコモなのです。ロコモが進行すると、将来介護が必要になるリスクが高くなります。
要支援、要介護になる原因のトップは転倒、骨折や関節の病気など運動器の故障であることはあまり知られていません。
※運動器の障害:骨折転倒・関節疾患・脊髄損傷の合計
厚生労働省2019年国民生活基礎調査の概況より改変
運動器とは、骨や筋肉、関節のほか、脊髄や神経が連携し、身体を動かす仕組みのことです。ふだん私たちは何気なく身体を動かしていますが、それは運動器の各パーツの働きが連動して成り立っています。どれか1つが悪くても、身体はうまく動きません。
運動器は、ふだんの生活で身体を動かして負荷をかけることで維持されます。そのため、ロコモを防ぐには、若い頃から適度に運動する習慣をつけ、運動器を大事に使い続けることが不可欠です。
運動習慣は体力に大きな影響を及ぼします。スポーツ庁の調査によれば、どの年齢においても運動・スポーツの実施頻度が高い人ほど体力テストの点数が高く、ほぼ毎日運動する50歳の人は運動習慣のない30歳の人より体力が高いことが分かります(下記グラフ参照)。
健康寿命とは、健康で日常生活を送れる期間のこと。日本は世界有数の長寿国として知られていますが、平均寿命と健康寿命の間には男性で約9年、女性で約12年の差があります。この期間は、健康上の問題で日常生活が制限されたり、何らかの助けを必要としたりしていることを意味し、さらに悪化すれば介護が必要になる可能性が高まります。
健康寿命を延ばし、平均寿命と健康寿命の差を短縮するためには、要支援・要介護になる前から「運動器の問題で日常生活が制限され」ている状態を改善することが必要です。このことがまさにロコモ対策といえます。
※平均寿命:厚生労働省 2016年 国民生活基礎調査
健康寿命:厚生労働省 2016年 簡易生命表をもとに作成
「フレイル」という言葉をご存知でしょうか。フレイルとは高齢者において生理的予備能※が低下し、要介護の前段階に至った状態を意味します。フレイルが現れる要因には身体的、精神・心理的、社会的の3つの側面があり(一般社団法人 日本老年医学会)、このうち身体的フレイルがロコモと深く関係しています。
ロコモはフレイルよりも人生の早い時期から現れます。ロコモが進行し、身体能力の低下が自覚症状を伴って顕著になったものが身体的フレイルです。移動機能の低下によって社会参加に支障をきたす「ロコモ度3」が、この身体的フレイルに相当する段階といえます。
※外からのストレスによる変化を回復させる能力
「ロコチェック」を使って簡単に確かめることができます。
7つの項目はすべて、骨や関節、筋肉などの運動器が衰えているサイン。
1つでも当てはまればロコモの心配があります。
該当項目ゼロを目指してロコトレ(ロコモーショントレーニング)を始めましょう。
左右とも1分間で1セット、1日3セット
POINT
支えが必要な人は十分注意して、机に手や指をついて行います。
5〜6回で1セット、1日3セット
お尻を後ろに引くように、2〜3秒間かけてゆっくりと膝を曲げ、ゆっくり元に戻ります。
スクワットができない場合
イスに腰かけ、机に手をついて立ち座りの動作を繰り返します。机に手をつかずにできる場合はかざして行います。
POINT
1日の回数の目安:10〜20回(できる範囲で)× 2〜3セット
POINT
1日の回数の目安:5〜10回(できる範囲で)×2〜3セット
腰に両手をついて両脚で立つ
脚をゆっくり大きく前に踏み出す
太ももが水平になるくらいに腰を深く下げる
身体を上げて、踏み出した脚を元に戻す
POINT
続けることが肝心です。
「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」でいつまでも元気な足腰を。
頑張りすぎず無理せず自分のペースで行いましょう!